順化と遺伝子

 今はEM菌で有名になられた比嘉照夫先生が柑橘や蘭の花の普及を沖縄でやられていた頃一枚の写真を見せてもらった事がある。それは1本の柑橘が一番下に黄色い実を付け一番上には花を咲かせているものであった。つまりその樹は実を付けながら花を咲かせるという、春に花を咲かせ秋に実を付けるという常識を持っていた私には青天の霹靂であった。そこで先生に言われたのは植物はその環境圧によっていろいろな生育をするのであって、その環境圧から植物を解き放ってやる事が大事なんだという話だった。
 人類はアフリカを基点に世界中に繁栄したがその過程で黒人が白人や黄色人種に発展していったと言われている。恐らく氷河期などの環境に適応できる肌の色と遺伝子を獲得していったのであろう。
 ブルーベリーも原産地の原種と呼ばれるものから育種によっていろいろな栽培種が出現した。栽培されているBBは大きく4系統に整理されてるが、その同科同属の植物は世界中に存在し、我が国でもシャシャンポが有名である。育種されたBBは落葉性の原種だけでなく常緑性の原種との掛け合わせも多い。特にサザンハイブッシュは明らかに常緑性の親の形質が顕著であり、暖地においては落葉しない傾向が見られる。このように遺伝子レベルで常緑性を示すものは、落葉性の原種が順化によって獲得した休眠と言う寒冷地環境圧耐性を必要としないということになる。全国的にサザンやRE系のの開花が早くて低温要求時間は充足したのかと言った心配の声があるが、一方では温室に入れて促成栽培を試みている人も居る。また肥料を切らなかったために落葉せず早く開花したのではないかと言う人も居るが非常に面白い現象だ。これらは全てBBには低温要求時間があるという前提からの発想だと思う。私は既にBBが育種によって交雑が繰り返され、原種の形質が多様に発現しているものと思うが,本質的には植物も人類と同じで環境圧への順化を繰り返しながら、更には突然変異などを経て遺伝子の中に新たな形質を獲得して変化(進化)しているものと思う。我々は日本と言う環境の中でBBが環境に適応できるように育種や栽培をしていく事が大事なのではないかと思う。りんごや葡萄、桃のように日本の優れた栽培技術に支えられた新しい日本の環境に合う日本人の好みに合うBBが生まれる事を期待したい。